妊娠中の歯科治療

妊娠中の歯科治療

南林歯科クリニックではデジタルレントゲン装置を導入しています。従来のレントゲン撮影の際の放射線の被曝より少なく、さらに防護用エプロンを使用しますのでお腹の赤ちゃんやお母さんの体には影響ありません。
治療内容に関してはきちんと説明して納得いただいてから行いますのでご安心ください。

一般に妊娠の外来刺激に対する影響の受け方から妊娠期間を次の三つに分けています。
妊娠初期  妊娠四ヶ月まで(16週まで)
妊娠中期  妊娠四~七ヶ月まで(17~28週まで)
妊娠後期  妊娠八ヶ月以降(29週以降)

妊娠のごく初期(受精から約17日間)では何か有害な薬物やレントゲンなどでトラブルが生じた場合、受精卵は死滅し、組織に吸収されてしまうので本人にもわからず、妊娠していたことさえ気づきません。

妊娠三ヶ月(12週まで)までは胎児の器官形成期(顔などいろいろな器官がつくられる時期)にあたり、非常に奇形が発生しやすい時期です。この奇形発生頻度の高い時期を特に臨界期といいます。風疹ウイルス・サリドマイド・LSDなどはこの時期に、奇形を発生させることが証明されており、歯科治療で注意が必要なのはこの時期です。特にレントゲン撮影や投薬に十分注意が必要です。

妊娠中期に入ると、胎児は胎盤によって安定した状態になります。
一般的に妊娠中のどの時期であっても通常の歯科治療を受けることは可能であると されています。
しかし出来れば胎児や妊婦への影響を考えて、比較的安定している 妊娠中期(4~7ヵ月)が望ましいでしょう。

妊娠後期になると、早産の危険や母体の異常(妊娠中毒や妊娠貧血など)がみられることもあるため、出来れば歯科治療は出産後に延期する方がいいでしょう。
歯の痛みや歯肉の腫れなどの急性症状 があれば、妊娠初期や後期は応急処置にとどめ、安定期に入ってからきちんとした 治療を受けるようにしましょう。

妊娠中はつわりのせいで、歯を磨こうとすると気持ち悪くなって歯ブラシを口に入れられなくなり、虫歯や歯周病になる人が多いのです。
また、歯周病菌にはいろいろな種類があって、女性ホルモン(エストロゲン)が好きな細菌(プレボテラ・インテルメディア菌)が妊娠中は5倍に増加します。妊娠中は女性ホルモン値が高くなりますから、歯茎の炎症を起こしやすいのです。
歯周病は20代で重症な人はほとんどいませんが、30代後半を過ぎると、急に罹患率が高くなります。最近は、高齢出産も増えているので注意したいところです。
妊娠中に歯茎が赤く腫れるなどの症状が出たら、ためらわずに歯科医を受診してください。また、予防の観点からも、つわりが落ち着いた中期ごろに、一度、歯科検診を受けておくといいと思います。
産後は育児で手が離せず、いっそう歯科への道が遠のきがちです。妊娠中に歯のケアを済ませておくといいですね。
歯茎の炎症も初期であれば、歯のクリーニング、歯垢を取り除くだけでもかなり効果があります。

(1)レントゲン検査の影響

診断にはレントゲン検査は大変有効な手段です。しかし同時に、その安全性について漠然とした不安を隠しきれません。特に妊娠中の被爆は注意が必要です。レントゲン撮影も鉛エプロンで防護して必要最小限にとどめます。まず、放射線について説明します。地球上に生きているものは全て、ある一定量の自然放射線をいつも浴びています。宇宙線や地中の岩石に微量に存在する放射線同位元素から放射線が出ているからです。これらの累積被爆放射線量は年間平均0.7ミリシーベルトほどです。また人体の安全上、許容される年間被爆量は50ミリシーベルト以下と言われています。わが国のレントゲン検査のための被爆線量は平均で年間2.6ミリシーベルト浴びている統計数字があります。自然被爆と医療被曝を合わせて3.3ミリシーベルトなのでまず安全と言っても間違いはありません。

レントゲンが胎児に及ぼす影響としていくつかの放射線障害が報告されています。
しかし通常の歯科レントゲン撮影では、これらの障害を引き起こすことはありません。
事実、産婦人科では妊娠の初期だとわかっていても胃の透視のためレントゲンを数枚撮影することがありますが、胎児には影響のない線量であると報告されています。
むしろ、レントゲン撮影を行なったことで「何か問題があるのでは・・・」という不安を招く精神的な影響や、またレントゲンを撮らないことにより正確な診断をくだせず的確な処置が行なえない影響の方が大きいのではないでしょうか。
具体的な数値を出してもう少しお話させていただきます。
歯科治療中のレントゲン撮影の被曝線量は、200~400ミリrad(ラド:体に吸収される放射線の単位)となっています。これは目的とする歯に対する線量で、腹部への線量はその1/100程度となります。
しかもレントゲン撮影を行なう際には散乱する放射線を防ぐため、鉛入りの防護エプロンをかけますので卵巣まで放射線が散乱する量は、 ほとんどゼロに等しい量になります。
またレントゲンで胎児に放射線障害を引き起こす線量は、妊婦の腹部に直接照射し胎児が1回に5~20radの被曝を受けた時であるとされています。
これは歯科レントゲン撮影の約1000回分に相当し、通常の歯科治療でこのような枚数を撮影する事はありえません。

(2)薬の影響

妊娠中にどんな薬なら飲んでも良いか、授乳中にどの薬を飲んでも赤ちゃんに大丈夫か、お母さんにとって一番知りたいところでしょう。
ところが多くの医薬品添付文書には「妊娠中の投与に関する安全は確立されていないので、妊婦または妊娠の可能性のある婦人には投与しないこと・治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にだけ投与する」と記載されています。
薬剤に関しては、どんなものでもおそらく「100%安全」と言い切れるものは無いでしょう。
薬剤は治療のためとはいえ、人体に何らかの影響を与えることが目的であり、全く安全ということは全く効かないという意味かもしれません。
しかしすべての薬剤が危険であるというわけではなく、妊婦の方にも比較的安全性が高く、安心して飲んで頂けるものがあります。妊娠中に抗生物質や鎮痛剤などの「飲み薬」が胎児に影響を及ぼすのは妊娠4~10週といわれています。この期間であっても、抗生物質の場合はフロモックスやメイアクトなどのセフェム系およびペニシリン系であれば胎児に対する安全性は高いと言われています。
また鎮痛剤であればカロナールなどは安心です。
消炎鎮痛剤で妊娠初期から使用可能なものは、非ピリン系のアセトアミノフェン(商品名 カロナール)・非ステロイド系の塩酸チアラミド(商品名 ソランタール)です。
アセトアミノフェンは催奇形および知的発達遅延と関連しないとの疫学調査が確認されています塩酸チアラミドは動物実験では催奇形は認められず、ヒトでの先天異常の報告もありません。
抗生物質または抗菌剤では、妊娠中を通じて比較的安全なペニシリン系(商品名タカシリン・ペングッド)やセフェム系(商品名 トミロン・オラセフ)を第一選択とします。
もう一つ妊婦さんが心配なこと、それは薬物の母乳への移行ではないでしょうか。
母親に投与された薬は、母乳を介して乳児へ移行しますので特に新生児期の母親への薬物投与は慎重に行ないます。
薬は授乳直後に服用し、新生児に副作用のある薬を使用しなければならない時は授乳を中止しましょう。
消炎鎮痛剤はほとんどの場合、授乳中の投与に関する安全性は確立されていません。
服用説明書によると、インドメタシン・メフェナム酸は授乳中止となっていますが、アスピリン・アセトアミノフェンについては記載が無いので、必要な時は頓用で使用します。
抗生物質または抗菌剤は、母乳中に移行しますがその量はごくわずかで、乳児の血中にはほとんど認められない量です。
やはり第一選択はペニシリン系・セフェム系で乳児に対しては比較的安全な薬です。
母体や胎児への影響を第一に考えれば妊娠される前に歯の治療をすませておくことが望ましいでしょう。

(3)麻酔の影響

妊娠中の歯科治療における麻酔使用については通常の麻酔量(カートリッジ1~2本程度)であれば、お腹の中の赤ちゃん(胎児)に対して心配はありません。ただ妊娠8ヶ月以降は早産の可能性があるので、歯科医に相談して下さい。局所麻酔薬として最も多く使用されているのはリドカイン(キシロカイン)ですが、これは医科においても頻繁に用いられ産婦人科でも無痛分娩や妊婦の会陰部の病変を切除する際にも使用されています。
これらの使用量に比較して通常の歯科治療で使用される量ははるかに少なく、母体や胎児への影響は少ないと考えられています。
痛みを我慢しながら治療を受けていただくより、痛みを早く取り去って快適な日常生活を送っていただくことのほうが母体や胎児にとって大切ではないでしょうか。

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