虫歯(むし歯治療)

Ⅰ、虫歯はどうしてできるか?

(1)酸脱灰説

口の中には、常に多種多様な細菌(常在細菌)が生息しています。その中の虫歯菌(ストレプトコッカス・ミュウタンス等)が、まず初めに砂糖をブドウ糖と果糖に分解します。ブドウ糖からは不溶性グルカンというネバネバしたのりが合成され、これによって歯に細菌が付着しプラークを形成します。一方、果糖からは酸が作られ口の中は酸性に傾きます。酸性度pH5.4(臨界pHと言います)以下になると、酸によって歯の硬組織の主成分(95~97%含有)であるハイドロキシアパタイトから、カルシウムイオン(Ca²+)とリン酸イオン(PO4 )が溶け出してしまいます。これを脱灰といいます。そして、残った有機質部分(3~5%含有)を細菌の作る酵素によって分解・破壊されると虫歯の穴(う窩)が出来てしまいます。これが虫歯の『酸脱灰説』です。

(2)カイスの輪

虫歯の原因はプラーク中の細菌ですが、それだけでは虫歯の発生を説明することはできません。なぜなら、虫歯予防に歯磨きが大切とよく言われますが、ほとんど歯磨きをしないのに虫歯が一本もない人がいます。反対に、一生懸命毎日歯磨きをしているのに虫歯ができてしまう人がいるからです。虫歯になりやすい人と、なりにくい人の差は、カイスの輪で説明されます。虫歯の原因には、カイスが提唱した三因子に時間の要素を加えた四っの因子が関係しているという説です。
第一の因子は、虫歯菌(ミュウタンス菌)が口の中に多数存在する。
第二の因子は、砂糖の摂取量が多い。
第三の因子は、歯の質が虫歯に対して抵抗性が有るか無いか。
第四の因子は、酸にさらされている作用時間が長いか短いかです。
これら四因子が全部そろった時、虫歯が発生するのです。

虫歯のメカニズム

Ⅱ、虫歯を予防するには?

(1)プラークの除去

虫歯になる第一段階は、プラーク中に存在するミュウタンス菌が酸を作り、酸性度pH5.4(臨界pH)以下になって初めて、歯は脱灰し始めるのです。この時、歯の表面は見た目には変化がないか、或いは白く濁ったように見える程度です。しかし、安心してください。この段階で、ブラッシングで歯の表面に付着しているプラークを完全に除去すると、唾液中の存在する重炭酸イオン(HCO3)の働きによって酸は中和され、歯から溶け出したカルシウムイオン(Ca2+)とリン酸イオン(PO4+)が、再び歯の中に取り込まれ再結晶化します。これを再石灰化と言います。さらに、フッ化物イオン(F-) があると再石灰化が促進されフルオロアパタイトという酸に強い歯質を形成します。
歯の表面がプラークで汚れたままだと十分な再石灰化阻害されます。
プラークが歯を脱灰するまで堆積するには約8時間かかります。また、24時間後には目に見える程度にまで成長してゆきます。このプラークを取り除き、すみずみまで歯の表面をつるつるの状態にすることが、プラークコントロールです。
プラークコントロールをしっかり行えば決して虫歯にはなりません。一生懸命毎日歯磨きをしているのに虫歯ができてしまう人は、磨き方に問題があるか、歯並びが悪くて上手く磨けないためだと思われます。
また、プラークは時間がたつと、カルシュウムが沈着して歯石になってしまいます。歯石になってしまうと、もう歯ブラシでは取り除けません。歯石の表面はざらざらしているため、さらにプラークが付きやすくなってしまいます。
プラークは歯の表面に均一に付くのではなく、付き易い所と付き難い所があります。プラークコントロールに重要なことは、プラークが付き易い所を認識し、能率よく除去できるように自分に適した磨き方を見つける事です。一度、歯科医院で歯科衛生士さんにブラッシング指導を受けることをお勧めします。
そして、歯ブラシでは取れない歯石をとってもらい、プラークが付きにくいようにフッ素含有の研磨剤で歯の表面をピカピカに磨けば、虫歯予防・歯周病予防にきわめて有効です。これを、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning;専門家による機械的歯面清掃)と言います。

(2)フッ素塗布

乳歯でも永久歯でも、萌出直後のエナメル質は幼若で、大変虫歯に成り易い性質があります。そこで、エナメル質の表面にフッ素を作用させ、歯の構成成分であるハイドロキシアパタイトを酸に強いフルオロアパタイトに置換させて虫歯予防を行います。

(3)シーラント(小窩裂溝塡塞法)

永久歯の中で最初に萌出する第一大臼歯は、6歳頃に生えて来る事から6歳臼歯と言われます。この歯は永久歯の噛み合わせやその後の歯並びの良し悪しを左右します。また、その咬合力が最も強いことから『咬合の鍵』とも言われます。ところが、この重要な永久歯が最初に抜け落ちてしまうのです。乳歯でも永久歯でも、萌出直後のエナメル質は幼若で虫歯に成り易いのです。第一大臼歯は、まだ萌出途中で既に虫歯に成ってしまうこともあります。
第一大臼歯の噛む面(咬合面)には、小窩裂溝という多数の溝があり、ここから虫歯に成り易いのです。この溝をフッ素入りのレジンで埋めてしまい、虫歯予防することをシーラントと言います。大切な永久歯を虫歯から守りましょう。

術前

レーザーで無菌化

レーザー照射後

シーラント処置

(4)三種混合抗菌剤(3Mix-MP法)

虫歯菌に犯された軟化象牙質は、すべて取り除くのが原則です。しかし、虫歯の進行が深いケースでは、軟化象牙質をすべて取ると歯髄が出てしまう場合があります。歯髄を保存させるため、軟化象牙質を残したまま三種混合抗菌剤を貼布する方法があります。歯髄保存処置の成否を左右する鍵は、歯髄の修復能力にあります。若い歯髄ほど修復能力は高く成功率が上がります。
三種混合抗菌剤は販売されていないため各歯科医院で調合します。その為、取り扱っていない歯科医院もあります。希望される方はお問い合わせください。

(5)レジンコート

歯を削った所は象牙質が露出しているため、冷たい水がしみたり再度虫歯に成りやすい状態になっています。
象牙質の表面に外来刺激や耐酸性を向上させるために、均一で薄く硬い被膜を生成させると同時に、象牙質内部にレジンを浸み込ませ「樹脂含浸層」を形成し、歯を丈夫にします。

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