金属アレルギー

【金属アレルギーとは】

通常、金属そのものは身体に対して無害なものです。
金属が汗や唾液などの体液によってイオン化した金属が体内に取り込まれます。
汗をかくとネックレスや時計の肌に接触する部分が赤くなったりかゆみが出るのは、汗の塩分がイオン化を促すからです。
取り込まれた金属イオンは体内のタンパク質と結合します。このタンパク質と結合した物質(アレルゲン)を異常なものと認識した生体がアレルギー性をもつ(感作される)ようになり、再び同じ金属が体内に入ってタンパク質と結合すると皮膚や粘膜を破壊することが金属アレルギーのメカニズムといわれています。

金属アレルギーが発症するまでの流れを示すと
①アレルゲン(金属イオン)をヘルパーT細胞が何らかの理由で、有害であると認識する。
②ヘルパーT細胞がマクロファージに、アレルゲン(金属イオン)が接触している自己の組織を攻撃するよう指示を出す。
③ヘルパーT細胞自身がキラーT細胞(司令塔タイプから攻撃実行タイプ)に変化し、アレルゲン(金属イオン)が接触している組織に攻撃を開始する。
このような免疫の反応が金属アレルギーを引き起こすとされています。

なぜ、ヘルパーT細胞が金属イオンを有害と認識するかは未だ解明されていません。

歯科治療には合金が用いられますが、貴金属の含有量が少ないほど溶け出しやすくなります。上下の歯が噛み合った時の摩擦によって合金粒子が唾液中に拡散し、危険性が高くなります。多数の歯に多種類の合金が使われているとイオン化傾向が強くなり、症状が出やすくなります。イオン化傾向の高い金属とは、電解質の中で溶け出して金属イオンに成り易い金属でアレルギーを起しやすいです。
歯科治療に用いられる金属でアレルギーを起しやすい割合は、水銀23.0%>ニッケル13.5%>コバルト13.5%>スズ12.8%>パラジウム11.3%>クロム9.5%>銅7.3%>白金3.6%>亜鉛1.8%>金1.8%>カドミウム1.5%>アンチモン0.4% という報告があります。

また、昭和62年に東京都済生会中央病院皮膚科で金属パッチテストを274人の患者さんに行った結果では、アレルギーの頻度のいちばん高かった金属として、水銀。次にニッケル、コバルト、スズ、パラジウムの順と報告しています。

歯科治療で用いられる金属と皮膚科でアレルギー反応が多かった金属が全て一致していたのは驚くべき結果です。

金属アレルギーは花粉アレルギーのように原因となる物質に接触して短期間に症状が出るタイプとは異なり、遅延型のアレルギーと呼ばれ金属に接触してからすぐに症状がでるタイプではありませんので、原因が金属と思わず悩む方も多いようです。
ピアスやネックレスなどによる皮膚症状は早期に発症しますから、原因に気がつくきっかけになります。
このような場合には、装飾品だけでなく歯の詰め物や食品、飲料水など生活環境全般を見直すことが必要です。医療機関を受診する場合には、内科、歯科、皮膚科など多角的な見地から検査や治療を受ける必要があります

金属アレルギーは一度生じてしまうと、発疹・痒みを伴う皮膚炎、関節痛などの症状に長年悩まされることが多い。アレルギーの原因となる金属(ニッケル、クロム、コバルト、水銀、パラジウム、銅、白金など)は生活環境に広く存在し、皮革、セメント、砂、消毒薬、予防接種薬など、見た目では金属にみえない物にも入っています。アクセサリーなど原因が特定しやすいものは身に付けない、接触しないなどで対処できるのですが、体内に埋め込まれている金属が原因の場合はどうしたらいいのでしょうか。歯科領域で汎用されていたアマルガム合金は、口腔粘膜や歯肉に常時接触していて、金属アレルギーの原因になることが知られています。

【金属アレルギー検査】

(1)経口負荷試験
極少量の金属粉を飲み込んでアレルギー反応が現れるかを調べる少し荒っぽいテストです。
しかし、歯科治療に用いる保険の金属は多数の金属元素が含まれる合金のため、どの金属元素がアレルギー原なのかを調べるのが困難なことがあります。メーカーによっては微量元素まで、不明なことがあります。その場合、口腔内の入っている金属を少し削って飲み込むことでアレルギー反応が強くなれば、その金属が原因であると判るのです。保険の金属が入っている場合には簡単に調べられる有効な方法です。

(2)リンパ球刺激試験
リンパ球刺激試験(リンパ球幼弱試験)とは、患者様血液から取り出したリンパ球に、アレルギーの原因である口腔内金属を取り込ませることによって、活性化されるTリンパ球が存在すること(過敏性を有するかどうか)を確認する検査方法です。抗原を作用させない状態を100%として、比較し何%増加するかをみます。181%以上が陽性としています。かくれ型(遅延型)アレルギーの反応です。

(3)パッチテスト
金属アレルギーかどうかを検査するにはさまざまな方法がありますが、もっとも一般的で簡潔に行うことができるのがパッチテストと呼ばれるものです。これは「水銀」「ニッケル」「コバルト」など17種類の金属の試薬を含ませた特殊な絆創膏を背中に貼りつけて、アレルギー反応があるかどうかを判定するものです。17に分けられた絆創膏のいずれかの部分の赤く腫れ上がったり、かゆくなった場合はその金属に対するアレルギー反応があるということになります。
なお、検査期間中にかゆみが出たからといって、かいてしまうのは厳禁です。
また、普段の生活で抗アレルギー薬を使っている場合は、正しい結果を得ることができないので、事前にその旨を歯科医師に伝えておきましょう。
パッチテストとは、アレルギーの原因である物質、またはアレルギーの原因が分からない場合は疑わしい物質、を肌に貼り付け数日様子をみてアレルギー反応を調べるものです。
パッチテストは保険適用(皮膚科)です。アレルギーの原因がわからずたくさんの物質を検査する場合は皮膚科での検査をお勧めいたします。

ただし、アレルギーの疑いのある物質を肌に付けるわけですから、新たにアレルギー症状をひきおこしてしまう心配もあります。
また人によって皮膚の抵抗閾値(簡単に言えば、皮膚の丈夫な人はかぶれにくいが、皮膚の弱い人はかぶれやすい)が違いますので、パッチテストで確実な結果がわかるとは限りません。

(4)毛髪ミネラルテスト
毛髪から体内の有害ミネラルの蓄積度を推測することができます。ホメオスターシス(恒常性)機構が働いていて、食事の影響も受けやすい血液よりも、毛髪の方が、体内の水銀、鉛、ヒ素などの有害ミネラルの蓄積を反映し、必須ミネラルの過不足をもチェックできるので、毛髪ミネラル検査は有害金属汚染検査として有効です。

【歯科治療に用いられる金属】

(1)銀アマルガム合金(水銀・銀・スズ・銅・亜鉛・・・)
かつては、成分のおおよそ50%が水銀のアマルガム合金が汎用されていたと言われているが、現在では3%以下(JIS規格)に抑えられている。水銀と銀、スズ、銅などを錬和し、硬化させて、口腔内の充填用として使用します。健康保険が適用され、広く使用されていた材料ですが、辺縁破損が起こりやすく、二次カリエス(虫歯)の発症頻度が高いこと、また、水銀による人体と環境への影響の懸念から、水銀の使用を止めた歯科医院が増えています。歯科用の水銀は無機水銀が使用されていますが、メチル化されると、水俣病の原因となった有害な有機水銀となります。

(2)銀合金(銀・亜鉛・インジウム・スズ・ルテニウム・アルミニウム・・・)
乳歯のインレーや鋳造冠、永久歯のコアーに用いられる保険適用の代用金属です。
銀72% 亜鉛12% インジウム6% その他10%(パラジウム・スズ・ルテニウム・アルミニウム)が含まれています。

(3)金銀パラジウム合金(金・パラジウム・銀・銅・亜鉛・インジウム・ガリウム・イリジウム・・・)
永久歯のインレー・クラウン・ブリッジ・義歯のクラスプなど保険で使用される金属の大部分を占めている代用金属です。
金12% パラジウム20% 銀50% 銅16.5% その他1.5%(亜鉛・インジウム・ガリウム・イリジウム)が含まれています。

(4)チタン(インプラントや金属床に利用され最も安全な金属)
チタンは、大気中では表面に「不動態」と呼ばれる薄い酸化皮膜を作ります。 この膜にさえぎられ、内部の金属イオンは溶け出さなくなり、金属アレルギーが発生しにくくなるのです。 不導体は耐食性があり、そのためにチタンは汗をかいたり海水に濡れたりしても錆びないのです。 チタンが歯科インプラント(人工歯根) 心臓弁 人工関節 などに使われる理由は、このような安定性にあります。

【 金属アレルギーの症状】

アレルギーを発症すると、歯肉炎や舌炎、歯や歯肉の変色、味覚異常などの症状があらわれます。また、口の中の粘膜や腸からアレルゲンが吸収され、汗に濃縮されて、その汗に触れた皮膚に症状が出ることもあります。

◎口腔内症状:口内炎、口角炎、口唇炎、舌炎、口腔扁平苔癬、白板症

口内炎

口角炎

口唇炎

口腔扁平苔癬

白板症

◎全身症状:全身性接触皮膚炎、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、扁平苔癬、偽アトピー性皮膚炎、顔面湿疹

掌蹠膿疱症

扁平苔癬

顔面湿疹

現時点でわかっている金属アレルギーは以下の通りですが、健康の悪化に大きく影響していることがわかります。

  • 皮膚症状(アレルギー反応)・・・手足のかぶれ・シミ、シワ、肌荒れ
  • 老化・痛み(ガルバニ電流)・・・肩こり・ひざの痛み・頭痛 ・神経症状(水銀毒、重金属毒)・憂鬱・立ちくらみ・不定愁訴・自律神経失調・物忘れ ・全身病(病原菌との相互作用)・心筋梗塞・脳梗塞・アトピー様症状・発癌・糖尿病

【金属アレルギーを起こしてしまったら?】

歯科治療で使用した金属でアレルギーを起こしてしまったら、原因となった金属を取り除き、安全性の高いものに取り替える必要があります。
歯科治療でアレルギーを起こしやすい金属は、アマルガム(水銀)やニッケル、コバルト、パラジウムなどですが、金合金でもアレルギーを起こす可能性があります。
これから金属を使って治療をするなら、事前にパッチテストをして、使える金属を歯科医に相談するとよいでしょう。セラミックやプラスチック樹脂など、金属ではない材料を使用することもできます。

金属を取り除いた直後に、症状が一時的に悪化することがあります。これは好転反応と呼ばれ、症状は次第におさまっていきます。
症状が落ち着いてからデトックスを行うと、非常に効果的です。
デトックスには、内服や塗り薬、発汗などのナチュラルデトックスと薬剤の点滴によるメディカルデトックスがあります。

【有害金属を体から出すために】

口の中の金属がアレルゲンとなっていることが分かった場合、その金属を取り除いてしまえばいいわけです。
でも、これまでに身体の中に蓄積した金属はどうなるのでしょうか?
身体にたまってしまった有害金属を身体の外に解毒・排出(デトックス)しないと、本当の意味で健康になったとは言えません。
有害金属を身体の外に出すには、

  • 水分をとる
  • ミネラルを摂取する
  • 汗をかく
  • 排便・排尿を促す

といった方法があります。

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